第1回
コラージュ・題字:堀井和子
堀井和子さんが日々の暮らしや街歩きの中で見つけた、いいもの、美しいものを報告してくださる連載です。今回は、春の予感が感じられる表紙の本のお話から。
2009年、フランスの VENCE の書店で見つけたアンリ・マティスの本。
"EXPOSITION RÉTROSPECTIVE 1956" 回顧展の作品(主に油彩)のモノクローム写真が掲載されています。
書店奥のガラスケース内に、この本の表紙のコラージュを見た瞬間の、ドキドキしてくる感覚を今でも思い出せます。
4〜5年後、青山通りのギャラリーで、このコラージュのポスターを見かけましたが、紙や印刷の色のせいか、心が全く動かなくて、素通りできました。
この紙にこの色が印刷されている───この表紙は不思議なくらい威力があります。
2019年12月の日本民藝館展で買った、埼玉県の小峰和子さん製作の“和綿手紡ぎてぬぐい”。一度洗って乾かしているところです。
両端に墨色がかった濃紺の1本線、内側へ1/5入ったあたりに極く淡い水色で2本線が微かに見えるというデザインで、ものすごく潔くてシンプルだけれど、繊細で優しい印象も併せ持っています。
てぬぐいという形でこのデザインを見つめて、ハッとしてしまいました。
以前に紹介した BONNAT のチョコレート、2019年のインターナショナルチョコレートアワードで賞を獲得した、ニカラグア、EL Castillero のタブレットです。
小さいひとかけらを口へ運び味わい進むと、蜂蜜のようなコクと上品な酸味、果実のような甘さに深く包みこまれて陶然となります。
産地別のチョコレートのタブレットを味わい分ける楽しさに、さらにはまってしまいそうです。
日本橋の三重テラスで、四日市市笹井屋のなが餅を見つけて買いました。津の美術館へ行った帰り、お土産に買ってたいそう美味でしたが、日持ちしないこともあって、それ以来、なかなか味わう機会がありませんでした。
小豆餡をはさんだお餅を薄くのばしてから両面を焼いてあるのですが、このお餅の薄さ、平べったい形が何とも言えず魅力的ですね。お餅と小豆餡のバランス、歯ごたえが絶妙に感じられます。
外装を開封したらその日のうちに食べなくてはいけませんが、3時のおやつにそのまま5本、夜は2本をちょっと焙ってみたら、お餅がプゥーッとふくらんで香ばしく、バニラアイスクリームともよく合いました。
堀井和子
堀井和子さん プロフィール
1954年、東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家としてレシピ本や、自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍、国内外の旅のエッセイなどを多数出版。2010年に「1丁目ほりい事務所」を立ち上げ、CLASKA Gallery & Shop “DO” と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行なっている。
2020年3月3日 公開
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