第1回
コラージュ・題字:堀井和子
堀井和子さんが日々の暮らしや街歩きの中で見つけた、いいもの、美しいものを報告してくださる連載です。第2回目の今回は、風情ある小さなお庭の風景が届きました。
裏原の極く狭い小路の建物脇に、細長い山野草の箱庭を見つけたのは5〜6年前。それから季節ごとに花の咲く様子が見たくて、この小路を通り抜けています。
道路面から70cm高さの、ベージュのタイルで囲まれた中に、土・玉砂利を入れ、奥行80cm、長さ4mくらいのスペースに山野草が植えてあります。
紫の小さいカキツバタ、ムラサキツユクサ、水色の花の丁子草、ムシカリ、ヤマアジサイなどひっそり小さい花のアジサイの仲間、濃いピンクのシラン、ニワセキショウ、ヤナギラン、チゴユリ、ナルコユリなどが次々と咲いて、涼やかな花の色、葉の形の取り合わせがとても美しく感じられます。
20年程前、父が仕事で松本にマンションを借りていた頃、草花の好きな母に、松本郊外にあるハマ園芸という大きな園芸店へ、よく連れて行ってもらいました。ハマ園芸の山野草コーナーは充実していて、花の時期、小さい鉢植に見入っていたので、山野草の名前をずいぶん覚えました。
小さい鉢植を買い求め、東京で育ててみたのですが、長くよい状態で花を咲かせるのはむずかしかったです。ふと通り抜ける人が、季節ごとに、こんな贅沢な庭を鑑賞できるなんて、本当に素敵なことですね。
6月初めに花屋さんで、濃いめのピンクのシモツケソウと淡いピンクのササユリ、白のオカトラノオを買って、ガラスのピッチャーに生けました。山野草の種類を見かけると、つい、買ってみたくなって・・・。
堀井和子
堀井和子さん プロフィール
1954年、東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家としてレシピ本や、自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍、国内外の旅のエッセイなどを多数出版。2010年に「1丁目ほりい事務所」を立ち上げ、CLASKA Gallery & Shop “DO” と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行なっている。
2016年6月17日 公開