第1回
コラージュ・題字:堀井和子
堀井和子さんが日々の暮らしや街歩きの中で見つけた、いいもの、美しいものを報告してくださる連載です。今回は、盛夏の風物詩。お祭りの灯りが見えてきました。
秋田竿燈まつりは、青森ねぶた祭、仙台七夕まつりと共に、東北三大祭りの1つです。毎年8月初め(今年は3日〜6日)に秋田市で開催され、竿燈大通り(二丁目橋〜山王十字路の間)の華やかな様子はTVでもよく紹介されると思いますが、私は、お店が少ない静かな通りで、提灯を見た時のことが忘れられません。
大通りでの竿燈の移動が終了した後、それぞれの町の通りでは、子供がぐっと小さいサイズの竿燈を、額や腰、肩にのせて歩いていました。中学生が3人、小学生が2人くらいで、順番に披露しますが、このお祭りの日に竿燈に向う表情が、誇らし気で素敵でした。
竿燈は全体を稲穂に、提灯を米俵に見立てたものだそうで、提灯には町絞や社章が描かれています。(大半の町内にはスポンサーがついていると聞いています。)
私が撮影した提灯では、上米町一丁目の「兎の餅つき」、下米町一丁目の緑の松、上亀之丁の亀のデザインが印象的でした。ひっそりした通りは照明が少ないので、闇に提灯のデザインがくっきりと浮かび、ストレートに目に入って記憶に刻まれるのかもしれません。
通りから通りへ、提灯のデザインを追いながら歩いていると、ふと時間が別の流れかたをしているのに気づきます。
夏に家で使う団扇も、和紙と竹を使った道具ですね。旅先で気づくと、つい1枚1枚手に取って、好きなデザインを探してしまいます。実際に買い求めたのは、丸亀の柿渋の仕上げのものと、染織家の大木夏子さんの型染のもの。柿渋の茶色はすごくモダンに感じられますし、丈夫で堂々とした造りです。藍色の縞柄は、あおぐと風が爽やかに動きます。
堀井和子
堀井和子さん プロフィール
1954年、東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家としてレシピ本や、自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍、国内外の旅のエッセイなどを多数出版。2010年に「1丁目ほりい事務所」を立ち上げ、CLASKA Gallery & Shop “DO” と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行なっている。
2016年7月22日 公開