第1回
コラージュ・題字:堀井和子
堀井和子さんが日々の暮らしや街歩きの中で見つけた、いいもの、美しいものを報告してくださる連載です。今回は、透明で涼やかな輝きが届きました。
ひと月程前に買ったガラスの2段重ねのお重です。
買い物帰りに細い裏通りを歩いていた時、角のビルに、ガラスのお重の写真のDMが貼ってあるのが目に入りました。ギャラリーは2階で、グラスやオブジェなど荒川尚也さんの個展の作品が並んでいました。
外側がすりガラス色に加工されたお重がいくつかありましたが、DMで見た透明のお重は1点だけ。ガラスに厚みがあって、表面の凹凸も自然で、まるで氷の四角い塊のように見えて、そう、一目惚れでした。
蓋はどの向きでも、正方形の箱部分の内側にぴったり収まります。プレスガラスや型吹きガラスとは違う、宙吹きガラスの工法で作られているので、四辺や底の部分も均一ではなく、波打つような厚みの差が生まれ、ダイナミックで生き生きしたフォルムに感じられます。正方形のお重のガラスのカーヴが、柔らかくて、瑞々しいのです。
このガラスのお重を冷蔵庫で冷やしておいて(急冷はいけないそうです)ガラスの小さい器に、8月の桃の自家製アイスクリームを詰めたものを入れてサーヴしたら素敵かなぁ。スイカのシャーベットの時は、マリメッコの黄緑のストライプのテーブルクロスが合いそうです。笹の葉で巻いた冷たい和菓子もいいですね。
今は、グレイッシュな水色のテーブルクロスの上に置いて、暑さで溶けやしないか、見つめる日々です。
ワインを飲んだ後、エチケット(ラベル)のデザインが面白いと、瓶を捨てる前に記念撮影をします。フランスのワインは、瓶の口元に使う色もなかなかお洒落です。ボージョレは、手描きの文字と口元の蜜蝋の赤が可愛かった!
サンセールのロゼは、エチケットのグレーの色と、透けたBの文字のデザインがたいそう美しくて、空瓶を今もとってあります。
ガラスのお重でサーヴする時は、ワインの瓶のデザインもこだわって選びたくなります。
堀井和子
堀井和子さん プロフィール
1954年、東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家としてレシピ本や、自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍、国内外の旅のエッセイなどを多数出版。2010年に「1丁目ほりい事務所」を立ち上げ、CLASKA Gallery & Shop “DO” と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行なっている。
2016年8月5日 公開