第1回
コラージュ・題字:堀井和子
堀井和子さんが日々の暮らしや街歩きの中で見つけた、いいもの、美しいものを報告してくださる連載です。春を待つ心に、ワクワクするあたたかな色彩が飛び込んできました。
一昨年のクリスマスに、古い絵本を買いました。
右がその本 "Ho for a Hat!"、著者はウィリアム・ジェイ・スミス、デザインとイラストがアイヴァン・チャマイエフです。表紙カバーはなく、コンディションもよくない方だったせいか、とてもかわいい値段でした。昔の紙が何とも言えずいい風合いで、刷り色がシンプルで力強くて美しい。普段、古い本については、コンディションがよくないと手が出せないのですが、この本は、それでも欲しいと思いました。
左は "The New Nutcracker Suite and Other Innocent Verses"。こちらはオグデン・ナッシュの詩にチャマイエフのイラストの本です。昨年の夏頃、古書店で買いました。
最近、青山ブックセンターで "Blind mice and other numbers" の2014年の版を見つけました。(初版は1961年で、復刻版はイタリアから。)新しい、やや青みがかった紙と、チャマイエフの使っている色が、合わないような印象を持ちました。
向い側にグラフィックデザイナーを紹介する小さい本のコーナーがあり、チャマイエフの名前が目にとまり、ポスターの仕事の見開きにハッとしました。この三日月と船の絵、新聞“ニューヨークタイムズ”の切り抜きを持っていたのです。アメリカに住んでいた頃ですから、30年以上前、モノクロームの新聞広告の、雰囲気があるイラストとデザインが気に入って、大事にとってありました。
一昨年にチャマイエフという名前を覚え、ふとこんなふうにつながるなんて嬉しい。
こちらは2013年にフランスの地方の書店で見つけた絵本 "FORT COMME UN OURS"、作者は KATRIN STANGL と ALBIN MICHEL JEUNESSE。ヴィヴィッドな色使いが新鮮で、文字が印象的なレイアウトが素敵です。
「澄敬一の仕事」展が開かれていて、初日に見ることが出来ました。
伝説の、池尻大橋にあった "push me pull you" のお店へも、オープンした頃から閉めるまで伺っていたこと、今では自慢になっています。
ひとつひとつの作品について、澄さんの説明を聞いていると一日じゅういられそうな気がします。ものすごく面白いからくりがあるのに、すーっと素直で飄々とした美しさを持っていて、何とも言えないワクワクに溢れています。
アルミのトレーや、時計ではないアルミの鳩、木製のステッキ、ハンガー・・・・・・。知ると嬉しくなってしまう作品を会場で、ぜひ見つけてください。
堀井和子
堀井和子さん プロフィール
1954年、東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家としてレシピ本や、自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍、国内外の旅のエッセイなどを多数出版。2010年に「1丁目ほりい事務所」を立ち上げ、CLASKA Gallery & Shop “DO” と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行なっている。
2017年2月17日 公開
push me pull you
澄敬一の仕事
[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店(CLASKA 2F)
[会期]開催中〜2017年3月5日(日) 11:00〜19:00
> 本展について詳しくはこちら。
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