第1回
コラージュ・題字:堀井和子
堀井和子さんが日々の暮らしや街歩きの中で見つけた、いいもの、美しいものを報告してくださる連載です。老舗の銘菓に、大学発の最新野菜・・・。「日本の、いいもの」と出合う喜びに、心が湧きます。
徳島県の栗尾商店の“なると渦きん”というお菓子。カメラマンの公文さんの手土産。鳴門金時のさつま芋でこしらえた、きんつばです。
自然なさつま芋のグレイッシュなベージュに、こげ茶色の焼印。きんつばならではの温かな正方形が、シックなベージュ色の紙箱に並んだ様子は、はっと息を呑むほど美しかった。このままずっと見ていたいような気がしましたが、しっかり味わいました。見た目よりも遥かに密度のある本練りの餡に、力強さを感じました。徳島県の物産展の売場へ行ったら、必ず探してしまいそうです。
スーパーマーケットで見つけたリーフレタス“フリルルージュ”は、玉川大学農学部監修の「
リーフレタスは、葉先がギザギザ入り組んだ形で、やわらかい口あたりなので、サラダを作ると、ドレッシングがいい具合にまわって、繊細な仕上がりになります。旬の新玉ネギのスライスや砂糖さや、グリーンアスパラガス、そら豆などとこの“フリルルージュ”を和えると、彩りがぐっとエレガントで、とびきりおいしいサラダに。
日経新聞に時々、日本の各地の大学農学部が製作に係わった日本酒や缶詰、お菓子、野菜についてのニュースが掲載されていて、新しい製品がいつも気になります。新宿タカシマヤで開催される、大学発の食品イベントも、つい覗いてしまうのです。
散歩の途中で見た、PÄRLA という、ショットとクレープのお店の看板です。クレープのメニューが書かれてあるのですが、錆びたような茶色と黒の板に、かすれた白墨の文字の線が、たいそう美しく目に映りました。
生クリームのシャンテリーのクレープに、ショットグラスのラム酒のセット、マロングラッセとラムレーズン、塩くるみ――どれも贅沢でおいしそう。テイクアウトだけのお店なので、実際にまだ味わっていませんが、前を通るたびに、魅力的だなぁと見つめてしまう看板です。
ずっと愛用していたソムリエナイフが壊れてしまったので、銀座シックスのワイン専門店へ行き、大きなガラスケースに並んだ100点くらいのナイフを、じっと見つめました。
柄がいろいろな材質で凝ったデザインだったり、ラギオール製だったり、高価なものもたくさんありましたが、一番何気なくて、すっきりシンプルな印象の“SEKI・SJ501 ブラック”を選びました。岐阜県関市で作られたソムリエナイフだそう。手になじむカーヴのデザインがまた、とても使い易かったので嬉しいです。
堀井和子
堀井和子さん プロフィール
1954年、東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家としてレシピ本や、自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍、国内外の旅のエッセイなどを多数出版。2010年に「1丁目ほりい事務所」を立ち上げ、CLASKA Gallery & Shop “DO” と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行なっている。
2018年4月6日 公開
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