第41回
CLASKA のスタッフが自身の愛用品の魅力について語るちょっとしたコラム。
第42回は、小学生の頃、スタッフが母からもらった詩集、詩人・谷川俊太郎さんの『うつむく青年』の話です。
小さい頃から絵本をたくさん買い与えられてきたからか、昔から本が好きな子どもでした。特に小説は、物語や言葉の持つ面白さに惹かれ、今も昔も変わらず好きですね。そんな様子を見ていた母が、何故か小学校低学年の頃にくれたのが、詩人・谷川俊太郎さんの「うつむく青年」という詩集です。
小説ばかり読んでいた私にとって詩は少々難解で、当時はよく理解できませんでした。ですが、この詩集の中にある『大きなクリスマスツリーが立った』や有名な『生きる』という詩など、いくつかの詩に母が漢字にフリガナを振ってくれたおかげで、今でも印象に残っています。
それから中高大と大人になるにつれ、不意に「見覚えがある詩だな」と、谷川さんの詩に出会うことが増えました。合唱曲の歌詞や、国語の教科書の中、大学で受けた詩の授業など。幼い頃はよくわからずに読んでいたものが、まさか日本を代表する詩人の詩だとは思いもしなかったので、「お母さん、センスあるな」と驚きましたね。
聞けばこの本は、47年前に母が中学生の頃、デパートで購入したものだそう。本をよく読む母はその分手放してしまうものもあるので、今手元に残っている本は厳選されたものばかり。そのうちの一つが小学生の頃私に渡り、今でも大切に手元にあると思うと、歴史を感じますね。
すでに色褪せて、少し破れているカバーがその年月を物語っています。
いつもは本棚の中にしまってありますし、愛用品というほど意識している訳ではないのですが、この本は、ふとした時に手に取って読めるように、これまで捨てずに残してきた大切なもの。もし自分が結婚して子どもを産むことがあれば、「これおばあちゃんからもらった本なんだ」と子どもに渡したいですね。これからも大事に残していこうと思います。
(CLASKA Gallery & Shop “DO” 日本橋店 スタッフ 野坂 優)
公開日 2022年3月18日
聞き手・写真・文 黒沢友凱
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