第31回
CLASKA のスタッフが自身の愛用品の魅力について語るちょっとしたコラム。
第32回は、高円寺の古着屋、「militaria(ミリタリア)」で購入した、デッドストックのブルガリア軍コートの話です。
去年の冬、くるぶしまで隠れるロングコートが欲しくてあちこちで探していました。私はどちらかといえば身長が高いほうなので、服を探す時、ウィメンズではなかなか気に入ったものが見つからず、それなりに骨が折れます。
そんな時、たまに足を運ぶ高円寺の古着屋さんで見つけたのがこのコート。ブルガリア軍のデッドストックで、見た目、生地の質感、そしてずるずると地面に擦れそうな丈の長さを見て「これだ!」と思い、自分にしては珍しく即決しました。
特に気に入っている部分は、理想的な丈の長さと、服に着られているように見えるダボっとしたシルエット。着てみると、広めの肩幅がストンと落ちて丸みを帯びるのが可愛らしいです。一つひとつのディティールも好きで、服の大きさに比べて小ぶりなボタンや、コートの前端と襟の若干余分な重なり、毛足の長さなど、目を見張る魅力が数多くあります。
買った後に気づいたのですが、服の中についていたタグに「1953年」と記されていました。機能的に見ればそれもそのはず。このコートは裏地もなく、着ていると重さで肩が凝って疲れるので、普段使いには向いていません。
ですが、そんな不器用な部分も愛しくて毎日着てしまいます。私がまだ到底生まれていない時にブルガリアで作られたものを、約70年の時を超えて東京で着ている。そう思うと不思議な気分になって楽しいですね。
このコートは、着始めてすぐに自分に馴染み、「きっとこれから先もずっと着ていくものになるな」と思えたものです。寒さが苦手なので冬は嫌いですが、このコートを着られる唯一の季節ということで、冬が来ることが少しだけ楽しみになりました。そう思えたことも含めて、見つけられて本当によかったです。
(CLASKA Gallery & Shop “DO” 丸の内店 スタッフ 船越優衣)
公開日 2021年12月24日
聞き手・写真・文 黒沢友凱
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