堀井和子さんの「いいもの、好きなもの」
写真・文:堀井和子
明治通りを走っている HEDIARD の車を見ました。
HEDIARD の紅茶缶は、紅茶を飲み終わった後もとっておいて、今はマカイバリ茶園の春、夏、秋摘みやシーヨク茶園の夏摘みを入れて使っています。
赤は、どちらかと言うと普段選ばない色かもしれないのですが、HEDIARD の赤は特別です。
この色より、青みが強くても黄色みが強くても、選ばないなぁと思うくらい、絶妙な赤に感じられます。
業務用のトラックですが、遠くからでもちゃんと HEDIARD の、あの赤だとわかりました。
例えばですが、郵便局の車の赤は、朱色がかっていたり、フワッと抜けたような色だったり、案外いろいろな赤にペイントされていて、色みが決まっていないのかなぁと不思議です。
HEDIARD には、きっとこの赤の色を出さないとダメという、徹底した申し送りがあるのでしょうね。
私はメタルにペイントした色に、思いのほか強く
紅茶缶やお菓子の缶だけでなく、自動車や自転車、電車、クレーン車、飛行機などの色に、ワクワクしてしまいます。
一緒に出かけた人が銀行や郵便局に立ち寄る時など、通行量の多い通り沿いで自分が好きな色、デザインの車を探していると、全然飽きることがないくらい。
街路樹の脇に停車しているのは、産業廃棄物運搬車。
紙に印刷してある黄色では、レモンイエローくらい軽い色も好きですが、車体に塗ってある黄色は、この車くらいがカッコいいなぁと思います。
産業廃棄物運搬車という表記がありましたが、フォルム、デザインも、モダンでシンプルでカッコいい。
コンビニエンスストアの駐車場で見かけた、ASTON & MARTIN の VANTAGE。
滅多に出合えない綺麗な濃いめの水色に目を奪われました。
フロントのデザインは、グラマラス過ぎて好きではありませんでしたが、後部が本当に美しかったです。
自動車を見るのが習慣になったので、 sept septième の今年の T シャツにも銀色の車のデザインを。
速く走れる機能を持っているタイプではなく、どちらかというとおっとりした旧車のタイプが好きなので、活字は“ゆっくり、行きましょう!”という言葉にしました。
街で目立っていたギャラリーの看板。
ネオンサインの水色、それも手描き文字みたいなデザインが面白い。
ハッと刺さってくる光の水色です。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載
> 堀井和子さんの「いいもの」のファイル (*CLASKA発のWEBマガジン「OIL MAGAZINE」リンクします)
> 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」