堀井和子さんの「いいもの、好きなもの」

第4回:真冬のムラサキツユクサ/スズカケノキの実/リネンのハンカチーフ

写真・文:堀井和子


 今年1月6日に、外苑前駅近くの工事現場で見つけた、ムラサキツユクサの花。

 ムラサキツユクサは5〜7月、10〜11月が開花期ということもあって、夏の花の印象が強いけれど、花と葉が1月とは思えないくらい元気な様子でした。

 メタル材の銀色を背景にしたムラサキツユクサは、青紫の花の色が颯爽と感じられて、ハッとしました。

 ふと、根津美術館で見た、純金地の六曲一双屏風「燕子花図」を思い出したのは、冬の午前中の太陽光が反射した銀色が穏やかで、ムラサキツユクサを主役に引き立てていたからでしょうか。

 メタル材の隣は光を通す素材だったので、その前の花は、後からライトをあてたように写っていました。

 真冬にムラサキツユクサ、しかも工事現場の銀色や半透明の屏風の前で ── 散歩中にこんなシーンに出会わすなんて、すごく嬉しい。

 外苑西通りの街路樹スズカケノキを見上げたら、すっかり葉が落ちた枝先に、グレイッシュなこげ茶色の実が、たくさん吊り下がっていました。

 実は球形というより、尖った突起部分が集まった Objet のような形、ツリーのオーナメントみたいです。

 スズカケノキの花言葉は「天才」「非凡」と知って、もしスズカケノキの実の形のオーナメントを作ったら、「天才」と名付けられるなぁと面白くなりました。

 空の真青な色、コンクリートのモダンな建物のグレーが、グレイッシュなこげ茶色のスズカケの実を引き立てていて、こういう冬の色のコントラストって悪くないなぁと、思った次第です。

 雑誌で見たハンカチーフが見たくなって、自由ヶ丘の Lino e Lina へ。

 キッチンクロスやエプロンも数多く並んでいましたが、リネンのハンカチーフは、様々なストライプや格子柄のラインナップが見事でした。

 洗いにかけたリネン仕立て、肩の力が抜けたデザインは、どの色の系統も魅力的に目に映った気がします。

 選ぶのが楽しくなって、かなり時間を費やし、黄色にブルーの濃淡のストライプ、黄色に濃紺のストライプ、淡い水色とグレー、ベージュのストライプの3枚を選びました。

 家に帰って一番先に洗って使うことにしたのは、淡いデリケートなストライプ。

 特に、淡いグレーとベージュ、白の縦糸の構成が洗練されていて、他で見たことがないくらいのニュアンスを生み出しているのです。

 フワッと軽やかで爽やかな色使いに、私の春を待ち遠しく思う気持ちが反応したのかもしれません。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。

CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載
> 堀井和子さんの「いいもの」のファイル (*CLASKA発のWEBマガジン「OIL MAGAZINE」リンクします)
> 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


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