第1回
身近で素朴な山野草や雑草と呼ばれる草、樹木の美しさを伝える活動をしている榊麻美植物研究所の榊さんから、盆栽と暮らす日常の愉しみを教わります。
「梅が香を 夢の枕にさそひきて さむる待ちける春の山風」(源実朝)
暦では、小寒から大寒に向かうもっとも寒い季節。寒いけれど、陽は春に向けてどんどんと長くなり、蝋梅やツワブキ、水仙など黄色の花が咲くのを見ると、春の足音を感じずにはいられません。
この季節、花が咲くのを心待ちにするのが「梅」。植物の世界に入る前に贈り物としていただいた梅は、手入れを重ね、毎年花芽をつけてくれる大切な宝物のひとつ。
梅の魅力は「花」ですが、花の蕾・造形・香りと楽しむ要素も多く、また花後に新芽が出てくる姿にも、美しさを感じます。
古来から日本人に親しまれていたことは、万葉集に約120首も詠まれていたことからも分かります。
今回は、梅の手入れの方法について。
梅は比較的、花芽をつけやすい植物ですが、「花後の剪定」「芽摘み」「葉刈り」の主に3つの作業を季節ごとに行うことで、短い新枝にお花の芽をつけやすくなります。
1. 花後の剪定(2月頃)
梅の花殻は、そのままにしておけば6月になり実をつけてくれることもありますが、そうすると実に栄養を取られ、来年のお花が少なくなってしまいます。花後は、花殻をすべて摘み取り、小さく出てきている「葉の芽」を確認し、一番枝元に近い葉の芽のところで切り詰めます。これが、花後の剪定です。
2. 芽摘み(4〜5月頃)
花後の剪定の後、葉が開き春の成長期には、ぐんぐんと新しい枝葉が伸びていきます。この頃に行うのが「芽摘み」。長く勢いの良い枝は、1枝に葉が7〜8枚ほど出てきたら根元から4〜5枚を残して先端を切り詰めます。(短い枝は、そのままで構いません。)こうすることで、長い枝に使われていた力が抑えられ、短い枝に花の芽を付けやすくなります。
3. 葉刈り(6月頃)
その後、花芽を形成し始める前の6月頃に「葉刈り」を行います。ついている葉を枝元から2枚、刈ります。これを行うことで、葉がついたままの部分の根元には来年の花の芽がつき、葉を刈った部分は来年の葉の芽になるので、短く節間のつまった樹形が作りやすくなります。
その後、7月頃からは梅は来年の花の芽を作り始めますので、剪定は控えるようにします。
これを基本の手入れとして行うことで毎年、梅の花、香りを楽しんでいただけたらうれしいです。(※実際の作業の様子の写真を、2〜6月にかけて追加掲載して参ります。)
2018年1月16日 公開