
堀井和子さんの「いいもの、好きなもの」
第16回:木村忠太さんの画集/ベルギーの絵本/チューリップ
写真・文:堀井和子
「木村忠太画集」(1975年日動出版)の表紙カバーの絵は「パリの5月」。
古書店で買い求めたこの画集の奥付に、日本語版限定700部の第482番と記されています。
(この他に、フランス語版限定300部、オリジナルリトグラフ入り特装版40部が発行されたのだそうです)
生成りというかクリーム色のしっかりした紙に印刷されたテキストと鉛筆デッサンの作品は、とても雰囲気があって美しい。
後半のモノクロームのページは、光沢のある白い紙に印刷されていますが、前半のページは、カラーの写真をクリーム色の紙に貼ってあります。
今では見ることのないタイプの画集かもしれませんが、何か伝わってくるものが力強くて、記憶に深く刻まれます。
表紙カバーの絵も初夏の緑がこちらに迫ってくるようで、この季節の風や樹のにおいがふと感じられるような。
ちなみに表紙は、オレンジ色の布張りで KIMURA の手描き文字が白ヌキで入っている、粋なデザインです。
すごく大事に作られた画集だと思いました。
中の 26. ル・クロ=サン=ピエールの噴水(1972)のページ。
LE PETIT PARRONDO(1998年 Éditions du Rouergue)
ちょっとアヴァンギャルドなタッチのベルギーの絵本です。
私はこの絵本を、中の濃い水色の4ページに、ぐっと魅きつけられて買ったに違いありません。
他のページは、色の組み合わせや筆圧みたいなものが、少し強いなぁという印象を持っています。
この4ページは vol(飛行)がテーマで、ヘリコプターや小型飛行機、ジェット機などが長閑な線で描かれています。
2歳2ヵ月になる姪のところの男の子は飛行機が大好きで、音に反応して空を見上げ、飛影を確かめたくなるそうで、保育園の他の誰よりも早く飛行機を見つけるのだとか。
彼は道路を走っている車や工事現場のクレーンも好きで、車の種類もちゃんと言えるらしいです。
彼とはワクワクするジャンルが合いそうなので、もう少し大きくなったら、飛行機や車について、好きな車種やこの絵本のことなども、話してみたいなぁ。
まだ寒い2月、春が待ち遠しくてたまらなくなる時があります。
画集の初夏の緑のページを広げて見たり、春の色の花を買いに花屋さんに行ってみたり。
本当は、オレンジ色とやや濃いめのピンク色のチューリップを生けたかったのですが、この日はピンク系が少なくて、少し開いた白を選びました。
後に見えているのは、3月末からの企画展のために準備しているモビール。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載
> 堀井和子さんの「いいもの」のファイル (*CLASKA発のWEBマガジン「OIL MAGAZINE」リンクします)
> 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」
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