堀井和子さんの「いいもの、好きなもの」

第11回:ワイズベッカーさんのポスター/studio-bar/パン・ド・ミ

写真・文:堀井和子


2009年、銀座のクリエーションギャラリーG8 で開かれた、フィリップ・ワイズベッカーさんの「Recollection」展のポスター。 タイトルは SERRÉ (温室) GH508 で、この一枚はずっと収ってありました。

好きな作品のポスターですし、そろそろダイニングルームの壁に掛けたいなぁと、世界堂で額を探すことに。

お店の方に伺って、B全の大きなサイズの額のコーナーを教えてもらい、自然な木目の白木の額を見つけ、迷わず選びました。

我家の額は、ほとんどがアクリル製か白くペイントした木のベースにアクリル製で、縁のラインが目立たないタイプが多いのですが、この白木の額は素直な仕上げかたのせいか、すっと他の額と馴染んでいます。

ただ、ひとつ残念なことが。 15年も巻いたまま寝かせていたので、フワフワとしたシワが、昼間は気になるのです。

そんな理由で、珍しく夜のダイニングルームの写真になりました。

2012年11月、パリのポンピドゥーセンターで見た、シャルロット・ペリアンの Studio-bar (1930年の作品)。                     

ヨーロッパ原産のカエデの仲間、シカモアの材とメタルで作られた開き戸式の小棚付きの収納家具だそうで、経年変化によるシカモアの木の表情と、シンプルな取っ手のデザイン、棚のプロポーションとレイアウトがたいそう美しくて、印象に残っています。 こんな収納家具があったらなぁと。

昔、フランス旅行中、昼をきちんとレストランで食べた日や、胃腸が弱った日の夕食は、パンとチーズ・果物を買ってホテルでということがありました。

地下鉄の駅を降りてすぐのブーランジェリーで、ブリオッシュ系の大きめのパンをよく買いましたが、ふんわり口あたりが優しく、程よい甘さもあるので、バターやジャムなしで、美味しくいただけました。

9月にオープンしたパティスリー・ブーランジェリーカフェ bosquet de Harajuku で買ったパン・ド・ミは、ブリオッシュ生地みたいな、ふんわり、しっとりした食感で、自然ないい発酵をした香り。

パリでお世話になったあのパンを思い出す、懐かしい味わいでした。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。

CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載
> 堀井和子さんの「いいもの」のファイル (*CLASKA発のWEBマガジン「OIL MAGAZINE」リンクします)
> 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


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