DO Original
松澤紀美子さんのポシェット
18,700円(税込)
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布で自身が欲しい形のものを求め、心地のよい素材や使い勝手、始末のよい丈夫な縫製を考え抜いた作品づくりを日々続けられている松澤紀美子さん。このたび松澤さんの布の鞄にならった、CLASKA Gallery & Shop "DO" オリジナルの革のポシェットが誕生しました。
松澤さんはかつて、麻布十番で古道具とお菓子の店「petit cul(プティ・キュ)」を開かれていました。「店に並んだ古道具、おいしいお菓子、お皿やカトラリー、またそれらのバランスすべてがまるでアート作品のようだった」とは、当時から通っていたCLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクター 大熊健郎の言。その後店を閉じ、早稲田の元製本工場だった一軒家へ転居して約12年。現在に至ります。
ここが松澤さんのアトリエ。周囲には、共にアトリエ兼ショップを営む澄敬一さんによる作品と、松澤さんが作られた物と、その材料と道具と。年月をかけておふたりの審美眼で集められた、あるいはさらに手を加えて研ぎ澄まされた、多くの物の積み重ねと静かな調和に圧倒されます。所々に潜むウィットにも息をのむ、尊い空間です。
「ちょうど今」と松澤さんが製作中なのは、CLASKA ONLINE SHOP からも再入荷をお願いしているコースターでした。内布が入った布の層の縁を包み込むように縫い合わせた麻のコースターは、松澤さんの代表作。1枚ずつ、手縫いで丁寧に作られています。
松澤さんが作られた、綿麻の黒い鞄。こちらが今回実現した革のポシェットの、モデルになったものです。この鞄を作られた経緯やこだわりについて、松澤さんからお話を伺いました。
松澤さん「元々は、あるお客さんがこのポーチ(写真 右手前)を気に入ってくださって、『こういうフォルムの鞄が欲しい』と。そこで中に何を容れるのかをざっと伺って製作にかかりました。そんな風に時々、お客さんからのご依頼でセミオーダーをお受けすることもあるんです。ただし『ポーチを元に、同じフォルムで』と言っても、そのままとはいきません。ポーチはフタが両端までを覆っていますが、鞄にするには両端にショルダーを付ける分、フタが引っ掛からないよう内側へ寸法を詰めるなど、試行錯誤が始まります。」
松澤さん「そうして試作した鞄を、まず実際に自分で使ってみました。自分が形にしたものは必ず自分で使って、試してからでないとお客さんにはお出ししません。もちろん、体型や好みなど人が違えば感じ方も変わりますので、必ずしもお客さんのご希望と一致するとは限りませんが、自分なりに使って初めて見えてきたことを改善してからご提案するのは決め事としてやっています。その過程で、ショルダーの長さやフォルムを定めていきました。」
ー その、試用の段階の鞄を背負ってたまたま CLASKA へ『ドーの骨董市』を見に来られた松澤さん。そのときちょうどCLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクター 大熊が「こんな革のポシェットが欲しい」と思い描いていた新作のポシェットと形のイメージがぴったりだったことから、松澤さんと一緒に話し合い、革版を作らせていただくことになりました。
松澤さん「実は、普段の外出は荷物が多くて大きな鞄ばかり。自分自身、小さな鞄には必要も馴染みも感じてこなかったのですが、最近アトリエと駅の間の散歩を始めたところ、この鞄がものすごくいい!と発見(笑)。スマートフォン、財布、ハンカチくらいだけを入れて歩いています。斜め掛けできると両手が自由に使えるのもいいですよね。ちょっとした散歩には、ほんとうにぴったりです。ただ、この鞄が膨らむほど荷物を詰めたときのことも想定して、フラップのサイドが浮き上がらない(反らない)ように、カーブと深さを想定した試作も何度かし、使ってチェックもしました。」
松澤さんの布の鞄の寸法や工夫を踏襲しながら、革であることに合わせてあらためて松澤さんと一緒に素材選びや構造・ディテールの検証と調整を行い、実現しました。
スクエアでかっちりしたフォルムではなく曲線的であるにも関わらず、きりっと締まった雰囲気が何とも絶妙です。カーブのラインをどのように選ばれているのか、根拠を松澤さんに伺うと「どの作品でも、まず頭の中に描いたイメージを形にしてみてから、甘くなり過ぎた部分を削る作業を必ず繰り返し行っている」そう。
数字の計算で表せるものではなく、「フラップのカーブはどうか?」「ボディのカーブはどうか?」「それらがお互いに合うバランスはどこか?」「開け閉めはスムーズか?」と何度も見直し、余計に感じられる部分を削ぎ落とし、使ってみて解ったことを込めて縫い直し、生まれたラインだからです。
ファスナーでもオープンでもなく、フラップが口をはらりと覆っていることで、中身の荷物を守りつつそこはかとない女性らしさや柔らかさが醸し出されています。また縦19×横27cmの大きさにマチ8cmと、容量をしっかり確保。財布やスマートフォンに加えて化粧ポーチや折りたたみ傘など、荷物をたくさん容れてもポシェットの形が崩れにくいのもポイントです。
これまでご好評をいただいてきたCLASKA Gallery & Shop "DO" オリジナルのどのポシェットとも特徴が異なり、デザインや使い勝手の好みによってお選びいただく楽しみが増えました。
「ショルダーの長さを調整する金具は、あれば便利。それは知っているけれど、なるべく金具を使わないで処理できないものか」と考えた松澤さん。肩掛けにも斜め掛けにも両方で使いやすいショルダーの長さを探り、試用する中で「少し長いな」と感じたため縫い縮めたショルダーの端の部分を、そのまま残しました。
この部分、機能はないけれど、松澤さんの「金具を使わない」という意思を含んだアクセントになっています。金具の見えない革のみの一体感が、このポシェットのプレーンな魅力をより際立たせているようでもあります。もちろん、お好みでチャームなどを付けてもよいでしょう。
松澤さんは、布でものづくりをすることの特徴のひとつとして、持った時の軽さや触感もとても大事にされています。その中で、鞄という用途にするならばこれくらいの厚みが必要であろう、この縫製にしなければならない、という、ご自身の決め事に準じた工夫を重ねてこられました。
今回の革のポシェットの素材に採用した牛革も、かっちりとした硬く厚いものではなく、とても軽くしなやかな触感を持ちながら、様々な荷物を容れて日常的に使える丈夫さと型崩れしにくい程度の張りを持った上質なものを、と松澤さんの考えに沿って選び、革ならではの構造と縫製で仕上げました。
モデルの布版と今回の革版のポシェットの大きな違いは、フラップの留め方。布版はボディのボタンにフラップの共布ループを掛ける仕組みでしたが、革版はマグネットホックを使用した点です。
「留めるときに(スナップボタンなどで)ぐっと押さないといけないのでは中身に負担がかかってしまう。中身に負担をかけず、かつ素材に合った、スマートで目立たない処理にしたい。」という松澤さんと考え方が共通するものとして、革版ではマグネットホックを採用しました。片手で簡単に開け閉めができ、快適です。
鞄に内ポケットは最低1つ、できれば2つ、必ず付けるという松澤さん。今回はポシェットのシルエットを保つため内ポケットは1つですが、スマートフォンとハンカチくらいは余裕で入ります。幅広で使いやすい、大きめのポケットです。
革の裏面の毛羽立ち・摩耗から中身を守ってくれる、コットンの裏地付き。裏地の紫がかった濃紺色も、シックできれいです。
お散歩やちょっとしたお出かけにはもちろん、通勤用のショルダーバッグとしてや、旅先での外出用にも。軽やかな掛け心地と上品な印象で、幅広く活躍するポシェットです。
女性に限らず、短めのショルダーでタイトめに斜め掛けするのがお好きな男性にもおすすめします。様々なシーンや装いに合わせてご愛用いただけますと幸いです。
ポシェットのご注文は、下記よりお進みください。
「私自身は、革は体質的に合わないため、扱うことはありません。布で自分が欲しい形のカバンを作り始めて、今に至ります。革には出来ない形や用途、縫製を考えて、日々、作っています。ですから反対に、革だったら出来るであろう形も見える時があります。革は布と違った端の始末も出来ますし、寿命が長いことも利点だと思います。今回、布で製作した物の革バージョン。同じようで違う味わいを楽しんで頂けたら嬉しいです。」
松澤紀美子 | Kimiko Matsuzawa
1969年、岡山県倉敷市生まれ。高校卒業後、アルバイトを経て上京。32歳で「petit cul」を開く。34歳、澄敬一と出会う。「petit cul」を閉店。2005年、早稲田の元製本工場だった一軒家へ転居。布の仕事に取り組んでいる。
petit-culの日記
ご購入の前に
「松澤紀美子さんのポシェット」は、CLASKA Gallery & Shop "DO" が提携する国内の工場で製造を行っています。松澤紀美子さんご本人が製作(縫製)されているものではありません。また、松澤さんのアトリエでは販売されていませんのでご理解願います。
2017年1月23日 公開
写真・文:CLASKA ONLINE SHOP 速水真理