HAUのたね
写真・文:藁谷真生(HAU デザイナー) イラスト・挿絵:natsume
西村怜子さんをご存知でしょうか? 先日図書館に行った時にふと目に入った本。
「あれ?! このイラスト、昔に見たことがあるような...」 幼い頃の記憶が蘇ってきた瞬間でした。
その場で中身をパラパラとめくってみると、昔母が愛読していた編み物の本の中に描かれていたものと同じタッチのイラストが。しかも決定的なのが、スラリとした猫が人間さながらに洋服を着こなしているというちょっと不思議なイラスト。
あまりに自然体で洋服を着こなしている猫の姿は、幼い頃の私にはなんだか絵本の世界に入り込んだようなふんわりとした感覚として心の中にずっと残っていたようです。。
よくよく調べてみると、西村怜子さんは編み物本のシリーズだけでなく、イラストレーター、エッセイスト、ファッションコーディネーターと幅広く活躍されていた方だったことがわかりました。
洋裁や編み物をしていた母はたくさんの手芸本を持っていて、幼い頃、本棚の前で座り込みながらその本を眺めている時間が、少なからず私の原体験として今の自分を作っているのだなと思っています。
西村怜子さんの提案するスタイルは、よく見てみるとカジュアルだけどエレガント。母と私の好きなスタイルも西村怜子さんと一緒のような気がします。
これからの季節、コーディネートの主役になるリネンブラウスは、発売以来好評を頂いていた blouse "needle" のベースはそのままに、今年は少し襟元に変化をつけて新しいデザインに一新しました。
一見ノースリーブに見える袖は、肩まわりが露骨に出過ぎないよう、後ろの肩から前身にかけてホールド感のあるパターンに仕上げた優れもの。襟元には小さな襟をちょこんと控えめに付けることによって、きちんと感のあるデザインが生まれました。
さすがに真夏にはボタンを外して着用いただいても大丈夫。ある程度の厚さがある生地なので、襟の形もしっかりとキープしてくれます。
ボトムに合わせたのは今季イチ押しの新作パンツ。まるで 「 bloom =お花」がたくさん散りばめられたようなオリジナルのジャガード生地で作ったパンツは、綿レーヨンをベースとしたほんのりと光沢を感じられる個性的で新鮮な雰囲気に仕上がった一本。
定番的なシンプルなパンツも良いけれど、夏だからこそこんな主役級なパンツはいかがでしょうか? いつものスタイルに取り入れるだけでグッと華やかでユニークな装いが楽しめますよ。
<< 今回紹介したアイテム >>
◎ blouse "jug"
◎ pants "bloom (sold out)
*商品名を掲載しているアイテム以外は、すべて私物です。
Profile
藁谷真生 Mao Waragai
デザイナー。1981年、東京生まれ。エスモード・ジャポンを卒業後、アパレルメーカーにて約8年にわたり数ブランドのデザインを担当。2011年、自身のブランド「BLANKET(ブランケット)」を設立。2019年より、CLASKA発のアパレルブランド「HAU(ハウ)」のデザイナーを務める。コンセプトは「大人のための日常着」。「HAU」は、ポリネシア諸語のひとつであるマオリ語で、「風、呼吸、生命力」などを意味する言葉。
Instagram @hau_clothes