堀井和子さんの「いいもの、好きなもの」

第1回:栗の木のツリー/三日月/carré(大)/フラットな objet/トートバッグ 紅茶缶柄

写真・文:堀井和子


 11月17日から“フラットなobjet、いろいろトート”展が始まります。

 今年の栗の木のツリーは、月と雲のオーナメントの組み合わせです。

 銀色の細い三日月と半月は長谷泉さんに、白いマットな雲は seiken 工作所の井上正憲さんに、濃いめの黄色と透明のガラスは星耕硝子さんに作っていただきました。

 雲のオーナメントは、フラットな雲のお皿と同じような、生成り色に釉薬をかけた仕上がりのタイプを合わせるつもりでした。

 今回の、薄手でシャープな銀色の三日月や、硝子のオーナメントとツリーに下げると、釉薬のボリューム、艶感が、なぜか浮いて見えました。ふと裏に返してみたら、釉薬のかかっていない面の、マットで硬質な表情が、しっくり合うと気づきました。

 正憲さんは、大きさや厚み、釉薬の色、エッジの丸みなど、丁寧に試作を重ねてくださいました。想像していただけではつかめないニュアンスがあって、実際にツリーに下げてみて相性を確かめることができたのが嬉しかったです。

 ツリーのオーナメントの三日月の細い形が、新鮮な印象だったので、フラットな objet として大きなサイズも製作することに。

 コラージュ途中の和紙の上に置いた三日月。こんなふうな組み合わせでフレームに入れてもよいかなと。

 星耕硝子さんの objet、carré。昨年は6cm×6cm×2cmでしたが(右側の1点)、今年は7cm×7cm×3cmと、ぐっと大きいサイズに。

 ガラスの何とも言えない、おっとりとした流れ、光を通した側面の色は、ずっと見つめていて見飽きない気がします。冷たくない存在感が特別かもしれません。

 フラットな objet 3点。

 奥の細長い形は、陶芸家の栗田荘平さんの庭で見たスケートボードがモチーフです。
 極く小さいガラス器に各地の塩を入れて並べたりしても。
 1ヵ所の穴と、4ヵ所の木釘の仕上げかたになっていて、ハードメイプル材のバードアイの表情が魅力です。

 “うめちゃんの穴あきレードル”モチーフのヴァリエーション。

 不定形の穴が開いた四隅が丸い正方形の objet には、バターと蜂蜜の器をのせて、朝食のテーブルへ。

 木製品は塗装を施していませんし、ブリキは経年変化で黒っぽくなります。
 私は何も塗らないで、経年変化して色を深くした木が好きなので、こういう仕上げかたをお願いしました。

 そんな個性を頭に置いて、自由な発想で、あれこれ生かしかたを試していただけたらなぁと思います。

 今回のトートバッグは、プロポーション、ベースの生地の質感や色を変えた新作6種類の他、今までに製作した BREAKFAST 柄、文字柄の色違いなど6種類のラインナップ。

 こちらは薄いグレーの地に紅茶缶の柄(イラストは長谷光)、L’HEURE DU THÉ はお茶の時間というフランス語です。
 34cm×36cmで持ち柄は短かめですが、肩にも掛けられます。

 光が子供の頃描いた紅茶缶は、時間の流れかたがのびやかな中にあるようで、井上庸子さんのきっぱりとしたレイアウトで、大好きなトートバッグに仕上がったかなぁと。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。

CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載
> 堀井和子さんの「いいもの」のファイル (*CLASKA発のWEBマガジン「OIL MAGAZINE」リンクします)
> 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


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