第1回:今の自分に合うパンツ、知ってますか?
〜「work pants」ができるまで
CLASKA が発信するアパレルブランド「HAU(ハウ)」のデザイナー藁谷真生が綴る、
服作りにまつわるエピソードや日々のおしゃれにまつわるあれこれを毎週土曜日更新でお届け。
今回は、HAU のパタンナーを務める鉢木利恵さんをゲストに迎えた特別対談です。
特別対談企画/デザイナー 藁谷真生×パタンナー 鉢木利恵さん
藁谷着用のワンピース:「HAU|atelier one piece」
Profile
藁谷 真生(わらがい・まお) 写真左
エスモード・ジャポンを卒業後、アパレルメーカーにて約8年にわたり数ブランドのデザインを担当。2011年、自身のブランド「BLANKET」を設立。約5年間活動した後に2018年、CLASKA より「HAU」をスタートさせる。
鉢木 利恵(はちき・りえ)さん 写真右
アパレル会社にパタンナーとして入社。退社後フリーのパタンナーとして活動、衣装製作などに携わる。4年前に自身のブランド「somewear」をスタート。現在もフリーのパタンナーとして活動中。
────連載第4回目となる今回は、HAU のパタンナーである鉢木利恵さんをお迎えして、HAU の服づくりの裏側をご紹介していきたいと思います。
藁谷・鉢木さん(以下敬省略):よろしくお願いします。
────お二人は、出会ってどれくらいになるのでしょうか?
藁谷:私が最初に入った会社で一緒に仕事をしたのが最初です。その時点で、鉢木さんはすでにフリーランスのパタンナーとして活動されていました。もう、15年くらい前の話ですね。
鉢木:確か、ピンチヒッターとして急遽ご一緒した感じでしたよね?
藁谷:そうでしたね。社内の人から紹介していただいて。その後、私が独立して自身のブランド「BLANKET(ブランケット)」をはじめた時に「また鉢木さんと一緒にやりたいな」と思い、お声がけさせていただきました。それからは、ずっと一緒にお仕事させていただいていますね。
────実は「パタンナー」という仕事について良く理解ができていないのですが、具体的には、どういう仕事内容なのでしょうか?
鉢木:デザイナーからデザイン画などの資料をいただいて、まずはざっくりと大まかに型紙を作ります。そのあと、その型紙を元に「トワル」という、いわゆる仮縫いのサンプルを作って……。それを実際にボディに着せてみたりしながら、デザイナーと一緒に丈や幅を調整し、最終的に商品化する型紙を完成させる、というのが一連の流れですね。
藁谷:パタンナーに渡すデザイン画は、デザイナーによって書き込み具合が違いますよね。
鉢木:そうですね。袖丈や身幅などの数字を具体的に細かく指示してくださる方もいれば……。
藁谷:私のように、デザイン画と言葉だけで依頼する人もいます(笑)。
────具体的な数字の指示がない場合は、どのように形にしていくのでしょうか?
鉢木:「デザイナーが作りたいものを形にできる型紙をつくる」ことが、パタンナーの一番大切な役割だと思っています。具体的な数字の指示がない場合、私なりにその服のデザインを咀嚼して、「こういう感じでどうですか?」と、一旦仮縫いで提案させていただく感じでしょうか。
────ということはつまり、ある程度パタンナーのアイデアもデザインに反映されるわけですね。
藁谷:私はデザイナーなので、服のかたちや色など「目に見える部分」を主に考えます。鉢木さんは見えない部分、たとえばこのコートの裏側の布と布の継ぎ目の処理について「袋縫いにするとほつれも少ないし、見た目にも美しいんじゃないか」という提案をしてくださったりします。
鉢木:私はデザインというよりも機能面に関する部分で、いいものにするための力添えをさせていただいている感じですね。
────今日は、先ほど話に出た「トワル(仮縫いサンプル)」をお持ちいただいているそうですね。
鉢木:はい。こちらは今年の秋冬商品として発売予定のスモックワンピースとトップスのトワルです。
藁谷:「大人のスモックワンピース」ということをテーマにデザインしたもので、生地からオリジナルで作った自信作です! これに関しては、襟の部分のゴムをどこかまで入れるかということを、色々検証しましたね。
鉢木:デザイン画の段階で、藁谷さんは「ゴムを全体に通さないほうが子どもっぽくならないのでは?」 とおっしゃっていたのですが、「スモックワンピース」がテーマなのであれば、全体にゴムを入れたほうがスモック感出ますよね、と。襟の開き具合次第で印象は変えられるので、そちらを工夫してみましょう、と提案させていただきました。
────そんなやり取りがあったんですね。……すこし変な質問かもしれませんが、いいですか? 洋服のデザインに関するさまざまな権限は完全にデザイナーにあるものだと思っていたのですが、そうではないということでしょうか。つまり、パタンナーがどこまでデザインに介入していいものなのか? ということなんですけど。
藁谷:デザイナーもパタンナーも、その人によってスタイルは様々だと思いますので、「これが正解です」という答えはないんですけど……。
たとえば、先ほどのコートの仮縫いの話にしても、「こういう方法と、こういう方法があります。どちらがいいですか?」と言ってくださる方もいれば、鉢木さんのように「こうすると素敵だと思う」と、ご自身の視点を交えて具体的な提案をしてくださる方もいる。鉢木さんの場合、提案してくださるものの精度がとても高くて、「そう、これをイメージしてたんです!」という感じなんです。だから、安心してお任せできる。
鉢木:ありがとうございます(笑)。
藁谷:私は鉢木さんのことを全面的に信頼しているので、むしろ「介入待ち」なわけです(笑)。
────素敵な関係ですね。先ほどから、お二人の関係が何かに似ているなぁと思っていたのですが、ぴったりくる表現が見つかりました。「美容師とお客さん」の関係。
鉢木・藁谷:あー!
────具体的な指示をしなくても、「今日は少し軽めに」とか抽象的なオーダーで、あとはそのお客さんの好みも踏まえた上でいい感じに仕上げてくれる敏腕美容師が、鉢木さん(笑)。
藁谷:確かに、私たちそういう関係かもしれません(笑)。鉢木さんは技術も高いのですが、デザイナーの気持ちを汲む力もすごいと思っています。
鉢木:パタンナーという仕事は、機械的にやろうと思えばできる仕事かもしれませんが、あまりセオリーに縛られず、デザイナーと会話をしながら洋服を作り上げていくところに、楽しさとやりがいがあると思っています。
────ちなみに鉢木さんは、お仕事をしていてどういう瞬間が一番楽しいですか?
鉢木:型紙を作ったあと、それをもとにトワルを縫う時ですね。平面が立体になる瞬間。昔は、イメージが違うものができてしまうこともよくありましたが、最近はほとんど失敗がないです。
藁谷:「work pants」を作ったときも、ほとんど直しなしでしたもんね。
────HAU の服がすごいなと思うのは、ワンサイズなのに身長155cmの人も165cmの人も同じものを綺麗に着られるところ。ちゃんと着る人ならではの「HAU の服」になる。
藁谷:それはもう、鉢木さんのおかげだと思います!(笑) HAU の服作りにおけるテーマの一つに、「なるべく手仕事をいれる」というものがあるのですが、鉢木さんのパターン作りも手仕事の一つだと思っています。
鉢木:手仕事もそうですが、「日常」も大切なテーマですよね。印象的だったのが、春夏商品の「lake side onepiece」(CLASKA ONLINE SHOP では4月以降に発売予定)。湖畔のさざなみのような、少しゆらぎのある生地を使っているのですが、以前藁谷さんがお子さんと一緒に湖畔でキャンプをしたという話を聞いていたので、「あの旅の記憶から生まれた服なのかな」と想像したりして……。日常生活が洋服のデザインに反映されているって素敵だなと思うし、藁谷さんらしいとも思いますね。
藁谷:ありがとうございます!
────以前のインタビューで、藁谷さんが「服作りは一人じゃできない」という話をされていましたが、今回二人のやりとりを聞いていて、HAUの服がいかに一つひとつ丁寧に、そして時間をかけて作られているのかがわかりました。
藁谷:安心してお任せできるブレーンがいるのは、本当に心強いし有難いです。
────さて、今月末には秋冬コレクションの展示会が始まります。今年の秋冬のHAUはどうなりそうでしょうか?
藁谷:先ほど話に出たスモックワンピースもそうですが、オリジナル生地を使ったアイテムがかなり増えますね。テーマは変わらず、『大人のための上質な日常着』をお届けできたらと思います!
────楽しみです! 鉢木さん、本日はどうもありがとうございました。
鉢木:ありがとうございました! 藁谷さん、引き続きよろしくおねがいいたします。
<HAUの取扱い店舗に関して>
CLASKA Gallery & Shop "DO" 各店、および全国各地のセレクトショップにて2月より順次展開中。CLASKA ONLINE SHOP でも全ラインナップ展開します。(順次発売予定)
卸販売に関するお問い合わせは以下までお願いいたします。
hau_clothes@claska.com
HAU 初の秋冬コレクションは“秋の実りとくつろぎ” がテーマ。
身に着けると心も体もくつろぐような、リラックス感のある優しい風合いのアイテムを展開します。
HAU
2019 AUTUMN & WINTER EXHIBITION
Autumn Harvest & Relaxation
[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店(CLASKA 2F)
[会期]2019年3月26日(火)〜29日(金) 11:00〜18:00
*バイヤー様向けの展示会です。
[ご予約・お問い合わせ]
バイヤーの方はアポイント制とさせていただきます。ご来場日時を事前にご連絡くださいますよう、お願いいたします。会期中にご都合が合わない場合はご相談ください。
E-mail:hau_clothes@claska.com Tel:090-5573-0170(藁谷)
[プレスお問い合わせ]
CLASKA 広報 牛田実里(うしだみさ)
E-mail:press@claska.com Tel:03-5773-9667
2019年3月9日 公開
インタビュー・文:落合真林子(CLASKA)
撮影:速水真理(CLASKA)