40代からのカジュアルスタイル再入門

スタイリストの伊東朋惠さんと一緒に Over 40 のおしゃれについて考える企画。
記事の後編では、 おしゃれ過渡期世代が抱えがちな悩みを解決するヒントを探っていきます。

写真:清水奈緒 スタイリング:伊東朋惠 聞き手・編集:落合真林子 (CLASKA)


CONTENTS

前編/ 自分らしい "大人っぽさ" を探して

後編/ Over 40 のおしゃれ Q&A


お話を伺った方
伊東朋惠 (いとう・ともえ)


スタイリスト。 雑誌、 書籍、 広告を中心に、 フードやファッション、 インテリアなどのスタイリングで幅広く活躍。 フォトグラファーの夫、 11歳の息子、 猫と暮らす。 自身で手織りした織物やアンティーク雑貨を販売するプロジェクト 「IAMCLUMSY」 をスタート。

Instagram@tomoeitoworks @iamclumsyclumsyclumsy


後編/
Over 40 のおしゃれ Q&A


Q1.
シンプルなカットソーやパーカーなどを着ると、 妙な生活感が出てしまいます。


A.
シルクなど、 柔らかい素材のアイテムをプラスしてみましょう。

HAUの服

パーカー:「zip parker "2way"」、 ボトムス:「denim pants "tapered" / cotton linen
パーカーの上に羽織ったシルクの羽織り (TOWAVASE)、 サンダル (A.P.C) は伊東さん私物


──まずはこちらの質問から。 パーカーといえば、 定番中の定番アイテムですが……。

伊東朋惠さん (以下、 敬称略):
パーカーって実は難しいアイテムで、 シンプルなボトムスを合わせるだけだと、 どうしても "普通のカジュアル" になってしまいがちです。 そんな時は、 何か異素材のアイテムをプラスすると大人っぽく洗練された印象の装いになります。 今回は、 私物のシルクガウンとサンダルを合わせてみました。

──前編でも話題に出ましたが、 ガウンはとても汎用性の高いアイテムですね。

伊東:
羽織ることで 「I ライン」 をつくれるのですっきりとした見た目になりますし、 気になるウエストやヒップ周りを隠すことも出来ます。 コットンやリネンなど様々な素材のものがありますが、 シルクのガウンは本当に便利。 季節を問わず使えますし、 軽くてあたたかく皺にもならないので、 一枚持っていて損はありません。 キレイめのトップスの上に羽織れば、 十分なお出かけ着になりますし。

──他に何かポイントはありますか?

伊東:
羽織ものを合わせる場合、 中のトップスとボトムスの色はワントーンに揃えると洗練された印象になります。 たとえば白いデニムに青のTシャツを合わせて、 茶色のガウンを羽織る……といったように全然違う色同士を組み合わせるとせっかくの I ラインが分断されてしまうので、 全身をワントーンにしたい場合はあまりおすすめしません。

──足元はサンダルを合わせていますね。

伊東:
重ね着をして全体にボリューム感が出る時は、 どこかで肌を出したほうが抜け感が出てバランスがよくなります。 もしスニーカーを合わせるならば、 ワントーンをキープできる白いスニーカーがおすすめです。


Q2.
黒、 紺、 ベージュなどベーシックカラーのトップスを着ると、 顔周りがくすんで見えるようになりました。 解決策はありますか?


A.
小さな面積でいいので、 明るい色のアイテムを足してみましょう。

HAUの服

ワンピース:「ポリエステルのショートスリーブワンピース
パンツ (uryya)、 帽子 (Sugri)、 サンダル (Trippen) は伊東さん私物。


──この質問は個人的にもすごく心当たりがあって、 30代後半くらいから黒や紺のトップスを着る時はジュエリーなどで顔周りに色をプラスすることを意識するようになりました。 そうしないと、 ただの "地味な人" になってしまう気がして。

伊東:
私は逆で、 若い頃は黒が苦手だったのですが 40 代以降よく着るようになりました。 その人の肌の色味の系統にもよるのかもしれませんね。 顔映りのいい明るい色味の服を着るのは一つの解決策ですが、 ベーシックカラーを好んできた方は急に明るい色を着ることに抵抗がある方もいるかもしれません。 私はもともと明るい色が好きなので、 全身ピンクでも平気なんですけど (笑)。 そういう人ばかりではないですからね。

──周りの人がどう思うかというよりも、 急な "キャラ変" に自分自身の気持ちが追いつかない感じがあります。

伊東:
なるほど。 そういう場合は、 まず足元に色を入れてみるのがおすすめです。 自分の顔に近いところに明るい色があると気恥ずかしく感じるかもしれませんから、 まずは顔から遠いところに。

──ご提案頂いたのは、 シンプルな黒いワンピースにピンクのシルクパンツを重ねたコーディネイトです。

伊東:
歩いた時にちらっと明るい色が見えるだけで、 全体の印象がだいぶ変わります。 カラフルなパンツがない場合や履くことに抵抗がある場合は、 赤や青など明るい色の靴下で足元に色を取り入れるのもおすすめです。

HAUの服

オールインワン:「all in one "kapok"」 中に重ねたトップス:「コットンスーピマテレコハイネック
バッグ (Mimi)、 靴 (ARTS&SCIENCE) は伊東さん私物


──もうひとパターンは、 白のオールインワンに青いニットを重ねたコーディネイトです。

伊東:
先ほどは足元に色をプラスする考え方でしたが、 こちらは首元の小さな面積に自分の顔色に合う色を入れる方法です。

──白と青のコントラストが華やかでいいですね。

伊東:
タートルではなく普通のTシャツでもいいと思いますよ。 ポイントは薄手の生地のものを選ぶこと。 そうすることで大人っぽく洗練された印象になります。 抵抗がなければ、 シースルー素材を選ぶのもトレンド感が出ていいと思います。


Q3.
いわゆる 「シンプルなTシャツ」 が似合わなくなってきました。 夏には欠かせないTシャツを、 おしゃれに着こなすコツはありますか?


A.
身体のラインを拾いすぎないものを選ぶ & 「テーマ設定」 をしてみましょう。

HAUの服

ベスト:「knit vest "cotton vintage"」、 ボトムス:「pants "painter"
Tシャツ (semoh)、 バッグ (Building Block)、 靴 (パラブーツ) は伊東さん私物


──パーカーと同様 Tシャツに関しても、 生活感が出てしまったり 「ふつう」 になってしまうという声をよく耳にします。

伊東:
大人の女性がTシャツを上手に着るポイントは、 身体のラインを拾いすぎないものを選ぶこと。 それから合わせるボトムスや小物類などトータルで見た時に複数の色を使わないことです。 まず寒色系・暖色系のどちらにするのかを考えると、考えをまとめやすくなると思います。

──上下ブラウンのワントーンコーデに、 ブルーのニットベストを重ねた装いを提案していただきました。

伊東:
Q1でも触れましたが、 上下をワントーンで揃えることで 「Iライン」 が分断されず、 シュッとして見えるんですね。 小柄な人には特に効果的だと思います。 例えば白いTシャツにベストを重ねるのも悪くはないのですが、 少々カジュアル感が強くなって大人っぽさからは離れていきます。 ワントーンで揃えたところにベストを差し色的に使うことで、 良い感じの大人カジュアルに仕上がります。

──Tシャツにプラスアルファ、 何かポイントをつくるということですね。

伊東:
そうですね。 Tシャツを主役にしつつ、 周りを固めるアイテムでしっかりポイントをつくってあげることが大切です。 今回提案したコーディネイトの場合は、 ベストではなくベルトをポイントにしてもかっこいいと思いますよ。 「今日はトラッドな感じに」 「少しフェミニンな感じに」 という感じでテーマを決めると、 考えをまとめやすくなります。

HAUの服

トップス:「tops "gauze"」 ボトムス:「pants "bloom"」(sold out)
帽子 (Sugri)、 スニーカー (ベンシモン)、 バングル (KO)は伊東さん私物


──もう1パターン、 白いTシャツを使ったコーディネイトも考えて頂きました。

伊東:
個性的なパンツを主役と考えて、 他の物は極力シンプルにまとめました。 シンプルな白いTシャツは、 こういう時に大活躍します。

──一見手ごわそうな個性派の服も、 うまくまとめてくれますね。

伊東:
そうなんです。 こういう感じでシンプルなものと合わせて色や柄が渋滞しないように気を付ければ、 個性的な服も意外と挑戦しやすいですよ。


Q4.
身長が低く小柄です。 上下ゆったりシルエットの服をバランスよく着こなす方法を教えてください。


A.
ポイントは、 "肌と抜け感を出す" ことです。

HAUの服

パンツ:「リネンツイルイージーパンツ」 (5月発売予定)
トップス (Le Minor)、 カチューシャ、 かごバッグ (アンティーク)、 サンダル (MARNI) は伊東さん私物


──伊東さんは、 小柄でありながらオーバーサイズな服を上手に着こなされている印象があります。 提案頂いたコーディネイトのポイントは?

伊東:
小柄な人が上下共にボリュームのある服をそのまま着ると、 メリハリのない印象になってしまいます。 袖をまくって手首を出したり、 パンツの裾をロールアップして足首を出すなどして体の細い部分が出る箇所をつくってあげると、 小柄な方でもバランスよく抜け感のある着こなしが出来ますよ。 このコーデのポイントは、 足の甲が出るサンダルを選んだこと、 トップスを IN したこと、 そして小物を黒でまとめたことでしょうか。 カジュアルな装いに黒を合わせると、 良い感じに引き締まった大人カジュアルになります。

──トップスを IN すると、 おなか周りが目立ちそうで……という声も聞きます。

伊東:
その場合は後ろも前も完全にINするのではなく、 軽くブラウジングすることでカモフラージュできますよ。 ウエストの位置が上がって全体のバランスも良くなるので一石二鳥です。


Q5.
少しだけ "きちんと" したい日。 いい感じの大人っぽさが分かりません。


A.
普段着として活躍しつつ、 ハレの日にも使えるワンピースがあると便利です。


──目上の人と食事をする時や子どもの学校行事など、 少しきちんとしたい日の服装って意外と難しく感じます。

伊東:
正式な冠婚葬祭用の服は別として、 "ちょっとだけちゃんとした場所に行く服" は、 普段着としても着られるものを選んだほうがいいと思います。 おすすめはワンピース。 「one piece tidy」 を使ったコーディネイトを二つ考えてみました。

HAUの服

ワンピース:「one piece "tidy"」、 中に重ねたシャツ:「stand coller shirts cotton silk
バッグ (Mimi)、 靴 (ARTS&SCIENCE)、 ジュエリーは伊東さん私物


──まずひとつめは、 同系色のシャツを合わせたコーディネイトです。

伊東:
かしこまった場に行く時は、 ワンピースと色のトーンを揃えたシャツやシルク素材などツヤ感のあるシャツを合わせるのがおすすめです。 パールのネックレスやイヤリング、 バッグや靴も革製の物を合わせるとぐっとシックな印象に。 普段着として着る時は、 ボーダーTシャツを合わせてもかわいいと思いますよ。

HAUの服

ワンピース:「one piece "tidy"」、 シャツ:「マンガン絣ドット柄ロングスリーブブラウス
帽子 (sashiki)、サンダル (MARNI) は伊東さん私物


──ふたつめのコーディネイトは、 水玉模様の白いシャツを合わせたもの。 きちんと感は変わらずありますが、 より軽やかな印象のお出かけスタイルになりますね。 家族や友人とちょっといいレストランに食事に行く時などに良さそうです。

伊東:
小物は麦わら帽子とサンダルを合わせましたが、 麦わら帽子をワンピースと同系色にすることでカジュアルになりすぎず、 落ち着いた印象になります。 こんな風に小物や組み合わせる服次第で全体の雰囲気は変えられるので、 色々試してみてくださいね。

──これまで自分が好きで着てきた服を完全に一新するのではなく、 ちょっとした工夫をすることでこの先の自分にフィットする装いにアップデートすることができそうだなと思いました。 伊東さん、 等身大のアドバイスをどうもありがとうございました!


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