2way フレンチ水玉ワンピース
23,100円(税込)
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つくる人
日常生活を豊かにする "もの" を生み出す人たちとの
トークセッション。
フリーランスのパタンナーとして様々なブランドの服づくりに関わった後、 2015年に自身のブランド「somewearclothing」 を立ち上げた鉢木利恵さん。
仕事、 子育て、 そして一人の女性としての社会との関わり。
変わらぬ洋服への思いと共に駆け抜けてきたこれまでの日々、 そしてこれからの話を伺いに、 埼玉・所沢のアトリエを訪ねました。
写真:川村恵理 聞き手・文・編集:落合真林子 (CLASKA)
CONTENTS
第1回/ "やりたい仕事" に出会うまで
第2回/それでも切れない洋服との縁
第3回/somewearclothing
最終回/洋服をつくることは、 社会と繋がること
Profile
鉢木利恵 (はちき・りえ)
「somewearclothing」 デザイナー。 短大卒業後、 「エスモード・ジャポン」 で学ぶ。 アパレルメーカーでのパタンナー・生産管理、 その後フリーランスのパタンナーを経て 2015 年に自身のブランドをスタート。 今年で9年目を迎える。 自身のブランド運営の他、 フリーのパタンナーとしても活動。 2児の母でもある。
Instagram: @somewear.h
最終回
服をつくることは、 社会と繋がること
──今年でブランドをスタートして 9 年目に入りました。 現在、 シーズン毎にどれくらいの型数をつくっていますか?
鉢木利恵さん (以下、 敬称略):
厳密に決めてはいませんね。 春夏・秋冬の区切りはありつつ、 基本的に予算内でできる数をつくるという感じです。
──堅実経営ですね。
鉢木:
それもあって、 これまでは限られた型数しかつくることが出来なかったのですが、 ブランドとして成長したい気持ちもあり今年は少し冒険をして融資を受けることにしたんです。 そういう決断をしたことで、 2024年の春夏商品は予算ありきではなく、 はじめて 「これだけあったらいいな」 という型数をつくることが出来ました。
──そうだったのですね。 ブランドの成長を考える思いと同時に、 お子さんも少しずつ手が離れてきて経営的なことを考える余裕がでてきたということもありますか?
鉢木:
それはあると思います。 ブランドを続けていくためには、 経営が大事だということを痛感しはじめました。
──具体的に、 何かお勉強されていたりするのでしょうか。
鉢木:
今の自分の経営はこれでいいのか? という不安があったので、 商工会議所の経営相談に参加してみたんです。 結果、 プロの目から見て 「この考え方は間違っていないから、 ここは思い切っても大丈夫」 とか 「これだけの収入が欲しければ、 これだけ売らなきゃけない」 という具体的な話も聞けて、 とてもいい勉強になりました。 その後も月に一度勉強会に参加していて、 色々吸収したり挑戦したり、 絶賛頑張り中です。
──今回色々とお話を伺って強く感じたのは 「続けること」 の大切さです。 アパレル会社を退職後に結婚や出産を経て仕事に時間を割くことが叶わなかった時期も歩みを止めず、 その時々のペースで洋服に関わり続けたことで今があるんだろうなと思いました。 洋服との縁が向こうからもやってきたし、 それに対して鉢木さんも真摯に向き合いつつ、 自分自身の心の声に耳を傾けてきた。 全て積み重ねですね。
鉢木:
そうですね。 私が会社を辞めた後にパターンの仕事や衣装制作の仕事をくださった方々のおかげで、 今もこうして洋服に関わっていられていると思うので本当に感謝しています。
──来年はブランドをはじめてから10年になりますが、 少しだけ 「これから先」 のことについても聞かせてください。 鉢木さんがはじめて洋服づくりに携わった90年代前半から約30年の年月が経って、 洋服に限らずですが 「ものづくり」 を取り巻く環境が当時と比べて大きく変化しています。 この先のご自身のものづくりは、 どうありたいと考えていますか?
鉢木:
そうですね……。 一言で表現するとしたら、 「循環のいいものづくりをしたい」 ということになるかと思います。
──その 「循環」 とは、 具体的にどういうことですか?
鉢木:
やはり、 アパレル会社を退社するきっかけになった 「一緒に服をつくってくれる工場の方たちにつらい思いをさせてしまうのは嫌だ」 という思いが自分の中では未だにとても大きくて、 自分のブランドをやる時はつくってくださる方々も自分も双方が幸せになるような仕組みがつくれたらいいなと思っていました。 無理のないスケジュール進行や適正な工賃をお支払いすることはもちろんですが、 コンスタントに仕事を依頼できるようなサイクルもつくりたい。 つまり、 つくってくださる方々のモチベーションが上がる仕組みづくりを大切にしたいということですね。
──鉢木さんが社会人になってからわりとすぐに 「インターネット」 というものが生まれて、 そこから社会がすごいスピードで変化していきました。 ものをつくる・売る・買うという分野に関しても、 今は様々な方法や選択肢が存在して、 とかく効率の良さや見た目の華やかさ・わかりやすさが求められる時代でもあります。
鉢木:
本当にそうですよね。 洋服の世界に限らずですが、 ものとしてのクオリティが高くなくても発信者にカリスマ性があればものすごい数が売れたりするじゃないですか。 ある種の 「見た目至上主義」 みたいな感覚は世代問わず多くの人が持ち合わせているものかもしれませんが、 そんな中でも、 根っこの部分では人の気持ちが通っているものや時間をかけて丁寧につくられたものを 「よし」 とする人はまだまだ多いんじゃないか……と思いたい気持ちがあります。 それこそ、 デジタルネイティブである自分の子どもたち以降の世代にも、 そういう感覚があることを信じたいなと。
──お子さんを持ったことで、 世の中の見え方が変わった側面もありますか。
鉢木:
それはあると思います。 子どもができると、 保育士さんとか小児科の先生とかそれまで縁のなかった 「社会」 と関わるようになるじゃないですか。 ああ、 すごく大切な仕事だなと、 改めて実感するわけです。
──本当にそうですよね。
鉢木:
かなり昔の話になりますが、 上の息子が保育園に通っていた頃にお世話になっていた保育士さんが私がパターンを担当したチュニックを買ってくれて、 仕事着として着てくれたことがありました。 他の先生は汚れてもいいようなスモックを着ている中で 「汚れちゃわないかな ?」 と心配になったのですが、 楽しそうに着てくれてるのを見てすごく嬉しくて。 会社を辞めた後、 仕事と子育ての両立に悩んで 「私には何ができるんだろう ?」 と自信を無くしたこともあったけど、 その先生の様子を見た時に 「これも一つの社会との繋がりだ。 自分の仕事が役に立っている !」 と力をもらえたんです。 その時の気持ちに、 今でも支えられている気がしますね。
──鉢木さんにとって、 洋服をつくることはイコール社会と繋がることなのかもしれませんね。
鉢木:
ものづくりって、 自分一人では決してできませんからね。 一緒につくってくれる人、 買ってくれる人、 色々な人たちからの反応があって、 それがまた次のものづくりに繋がっていくという……。 この先もいい循環を生み出していけるような、 自分らしいものづくりをしていきたいですね。
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