「CLASKA(クラスカ)」発のアパレルブランド「HAU(ハウ)」デザイナー藁谷真生のインタビュー記事写真

2019年春、CLASKA が発信する新しいアパレルブランド「HAU(ハウ)」がデビューします。
コンセプトは「日常の中で感じる非日常感」。
ブランド立ち上げの背景やコンセプトについてご紹介したインタビュー前編に続き、
後編では HAU ならではのものづくりに関するお話をお届けします。

> 前編はこちら。

一歩踏み込んだものづくりを

「CLASKA(クラスカ)」発のアパレルブランド「HAU(ハウ)」デザイナー藁谷真生のインタビュー記事写真

────インタビュー後半では、具体的に商品の話も交えながら 「HAU」ならではのものづくりについてお話を伺いたいと思います。いろいろと着目すべきポイントはありそうですが、キャリア初の試みにも挑戦されたそうですね。

藁谷さん(以下、敬称略):「HAU」の洋服は、"手仕事を加える"ということを意識してデザインしています。春夏の商品ではまだごく一部なのですが、今年の秋冬コレクションからはオリジナル生地を使った商品が増える予定です。当たり前ですけど、一からつくれるんですよ、生地って(笑)。「ボーダーはこの幅に、こういう色で……」という風に、自分が理想とするものを作ることが可能なんです。ずっとやってみたいと思っていたことだったので、刺激的で楽しい。工場の方々との信頼関係で物事が進んでいく感じも心地いいですね。

────作り手が素材から関われるものづくりって、贅沢ですよね。

藁谷:はい。食べものと一緒で、着て安心できるものを届けられたら、と。個人的に、いい生地と出会うことができたら服作りの仕事は半分終わったようなものだと思っています(笑)。それくらい、服作りは素材選びが大事なんですね。この一番初めの大切な部分に一歩踏み込みたいという思いと、ブランドのオリジナリティを追求する意味も込めて、生地づくりに挑戦しています。

────それにしても、こうやって一つひとつの洋服を見ていると、インタビュー前編でおっしゃっていた「ストーリー性」を感じますね。なにか、ひとつの物語を見ているような。

藁谷:それぞれのアイテムが、単体で活躍するのはもちろん、どれを組み合わせても違和感がないような「連続性」を意識しています。年々、季節の境目が薄くなってきているように感じませんか? "これは冬服、これは夏服"と決めつけずに、季節をまたいで自由な着こなしを楽しめるようなラインナップにできたらいいなと思っています。
 

HAUの色、HAUのかたち

「CLASKA(クラスカ)」発のアパレルブランド「HAU(ハウ)」デザイナー藁谷真生のインタビュー記事写真

「HAU」のイメージを具体化するために藁谷さんが集めた写真。外国の雑誌などからセレクトしたそう。

────基本は白、ベージュ、黒といったスタンダードな色味が並んでいますが、その中でこの目の覚めるようなエメラルドグリーンのワンピース! とても新鮮です。

藁谷:「HAU」を始めるにあたって、自分の中のイメージを具体化させるために参考ビジュアルや言葉を集めてみました。いわば、アイデアのかけらのようなものです。「朝起きた時、こういう光が窓から漏れてきたら気持ちいいな」とか「週末は、こういうエメラルドグリーンのバッグを持って買い物に行きたい」とか。エメラルドグリーンのワンピースは、まさにこの写真(上写真の右上)から拾った色なんです。

「HAU」の服は、誰かイメージする具体的な女性モデルがいるというよりは、こういった暮らしの風景や日常生活の中に散らばる色から形づくられています。

────先ほど「手仕事」というキーワードが出てきましたが、この白いリネンのワンピース、よく見るとイチジク柄の刺繍が施されているんですね。

藁谷:一針一針、職人さんに縫っていただきました。表地と同色の糸で刺繍することによって、カジュアルな素材でもどこかシックで大人っぽさを感じるものに仕上がりました。

それから、この「work pants」も自信作なんですよ。私自身、パンツにワンピースを重ね着するコーディネイトが好きなのですが、身長が小さいのでなかなかいいバランスで履けるものがなくて。小柄な人でも重ね着を上手に楽しめたらという思いで作ったパンツです。ウエスト部分はゴムと紐で調整できるようにして、コットンやリネンのトップスと組み合わせた時に全体的な印象がナチュラルになりすぎないよう、ツヤ感のある生地を採用しました。

────このパンツ、小柄な人のためのものかと思いきや、身長が170cm あるスタッフも綺麗に着こなせていて驚きました。

藁谷:このほかにも、襟元のディティールを工夫することできちんと感を演出したり、ゆったりしているけれどストンとしたシルエットにしたり、今を生きる大人の女性の心に寄り添うようなデザインを心がけています。
 

「HAU」が大事にしたいこと

「CLASKA(クラスカ)」発のアパレルブランド「HAU(ハウ)」デザイナー藁谷真生のインタビュー記事写真

デザインのアイデアを描くためのノート。今年の秋冬コレクションに向け、準備の真っ最中。

────「HAU」の洋服には、デザイナーとしての経験にプラスして、生活者としての藁谷さんの視点が色濃く反映されているんですね。他に、何かインスピレーションの素はありますか?

藁谷:街を歩いている人ですね。年齢問わず、男女問わず、じっくり観察してますよ(笑)。実際に服を着ている人を見るとデザインのアイデアが湧きやすいというか……ごく日常のシーンにヒントが散らばっているんだなと感じます。あとは、機能性の面などで子ども服から受ける刺激もありますね。

この白いノート(写真上)はデザイン画を描くためのもので、いつも持ち歩いています。そこまで綿密に書き込む方ではないのですが、描くときに使う筆記具だけは絶対これ、というものがあるんです。「フリクション」の 0.38mm。この細さが「HAU」のイメージなんです。以前、0.5mm で描いたら線が太すぎて少し可愛らしすぎるイメージになってしまいました。「これじゃ、HAU じゃない!」って(笑)。

────そういう細かい部分へのこだわりも、「HAU」の世界観を具現化するために欠かせないステップの一つなのですね。最後に、「HAU」のデザイナーとして、藁谷さんが一番大事にしていることについて教えてください。

藁谷:先ほど生地の話をしましたが、洋服って決して私一人の力ではできないんです。関わってくださっている人すべてが気持ちよく仕事ができれば、仕上がってくるものはおのずと良いものになるに違いない。支えてくださる方への感謝を忘れず、そしてその過程を少しでもお客様にシェアできれば、と。

「CLASKA(クラスカ)」発のアパレルブランド「HAU(ハウ)」のブランドビジュアル

次週から、HAU の連載「今着たい服、こんな服。」がスタートします。洋服の製作秘話についてはもちろん、服作りを支えてくださる方々の話も紹介できたらと思っています。楽しみにしていてください!

Profile
藁谷 真生(わらがい・まお)
エスモード・ジャポンを卒業後、アパレルメーカーにて約8年にわたり数ブランドのデザインを担当。2011年、自身のブランド「BLANKET」を設立。約5年間活動した後に2018年、CLASKA より「HAU」をスタートさせる。

<HAUの取扱い店舗に関して>
CLASKA Gallery & Shop "DO" 各店、および全国各地のセレクトショップにて2月上旬より順次展開予定。CLASKA ONLINE SHOP でも全ラインナップ展開します。(2月15日より順次発売予定)

卸販売に関するお問い合わせは以下までお願いいたします。
hau_clothes@claska.com

2019年2月9日 公開

インタビュー・文:落合真林子(CLASKA)
インタビュー撮影:速水真理(CLASKA)